2/20日9時放送 風立ちぬ感想と主題歌が松任谷由美の「ひこうき雲」になった理由
今週のお題「ふつうに良かった映画」
今夜・日本テレビで21時から放送する風立ちぬは、宮崎駿監督の長編アニメの引退作品になりました。
年齢的に長編をやるのが難しくなったからです。
しかし、短編は間違いなくやると思います。
風立ちぬは本当に良かった作品です。
風立ちぬの舞台は昭和です。
戦前から、太平洋戦争、そして戦後が舞台です。
主人公は堀越二郎。そして堀辰雄。
宮崎監督は、一人の主人公に二人の実在する人物を合わせるという、ユニークな方法を取りました。
堀辰雄は風立ちぬという小説を書いた文学者です。恋人を結核で亡くし、自らも結核で亡くなります。泥沼の太平洋戦争に突入する暗い時代背景の中にあって、恋人との時間をひたすらに大切にし、思いをつづった作家です。
堀越二郎はゼロ戦の設計者。
この当時の設計者は、いわば最高の国家機密を扱う天才という存在だったかもしれません。
戦闘機の設計者を主役にしているため、戦争を賛美しているという批判がでましたが、僕はまったくそう思いませんでした。
詳しくはネタバレになるので書きませんが、戦争の虚無、むなしさを端的に現すシーンが出てきています。
むしろ、この風立ちぬは、戦争という大きな波にあらがえない個人がいて、それは今生きている我々も同様であり、国家間の争いに巻き込まれたり、飲み込まれることに対しては無力であるということを示しています。
しかし、その中でも全力を尽くして生きることに価値があるのだということを、宮崎監督は示唆してるように感じました。
「汝を尽くして生きなさい」という聖書にもある言葉を、宮崎監督の盟友でプロデューサーでもある鈴木敏夫が参考にして「生きねば」というキャッチコピーを生み出しています。
まさに、主人公は時間がない中で、全力を尽くし、ゼロ戦の設計にすべてを尽くしたのです。
そして、その主人公に宮崎駿自身が投影されています。
ちなみに、主人公が最後にいうセリフはなかなか決まらず、声優をつとめた庵野さんも、ダメ出しをしたほどでした。そして、見事にすばらしい最後に変更されて完成した経緯があります。庵野さんは、エヴァンゲリオンの監督でおなじみです。彼は、風の谷のナウシカの時に宮崎さんのもとで働き、火垂るの墓では高畑監督の元で働いています。ちなみに、ベジタリアンです。
この風立ちぬの主題歌「ひこうき雲」は松任谷由美のデビューアルバムの表題曲です。
彼女はこの曲を、高校生の時に作詞・作曲しました。
ここからは私の記憶で書くので、ちょっとあいまいな点をご了承ください。
ひこうき雲は自宅の近くで亡くなった同級生を思って作ったレクイエム的な歌です。
死因については、明らかになっていなかったと思います。
その時、彼女は若いながらに死について考えて書いたと語っています。
しかも、内容は死を否定的には書いていません。
では、肯定的かというと、そうともいえません。
ともかく、ひこうき雲のはかなさが、風立ちぬのヒロインと重なり、製作に行き詰っていた宮崎駿監督のインスピレーションの助けになったそうです。
ちなみに、鈴木敏夫プロデューサーと魔女の宅急便のブルーレイディスクの発売を記念した公開対談で、「ひこうき雲」が風立ちぬの主題歌になるといきなり、サプライズで発表されました。松任谷由美はあまりのことに動揺し、興奮して「鳥肌が立った」と語っています。この時の様子は、鈴木敏夫のジブリ汗まみれで聞くことができます。
鈴木敏夫のジブリ汗まみれ - TOKYO FM 80.0 - 鈴木敏夫
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サプライズは30分~