ナマケモノの子孫・ジブリ 高畑勲監督 「赤毛のアン グリーン・ゲイブルズへの道」 飾らない演出の素晴らしさ
今週のお題「ふつうに良かった映画」
ジブリ・高畑勲監督の「赤毛のアン グリーン・ゲイブルズへの道」を紹介します。
L・M・モンゴメリ原作の赤毛のアンはカナダを舞台にした作品です。ご当地のカナダでは実写化されたドラマが映画化されていて、それは素晴らしい作品です。
ミーガン・フォローズのベスト作品の一つで、本当にアンと一体化していて、時間というのは限られていて、その瞬間にこそ美しさ、はかなさ、素晴らしさが存在しているということを示してくれたと思います。
そんな名作をジブリの高畑勲監督が世界名作劇場でアニメ化しました。高畑監督といえば、アルプスの少女ハイジ、火垂るの墓、かぐや姫の物語(こちらは、今年のアカデミー賞の長編アニメ部門にノミネートされています)などを手掛けている巨匠です。
そして、テレビで放送された赤毛のアンの1話から6話を劇場版に再編集したのが「赤毛のアン グリーン・ゲイブルズへの道」になります。
孤児院からカスバート家に引き取られてきた少女アンが、カナダプリンスエドワード島の美しい自然の中で、寂しかった過去から解放され、自分の居場所を見つけていくまでを描くストーリー。アンの物語の冒頭を丁寧に描いたこの作品には、喜びや絶望を乗り越えて、世界の美しい部分を見い出だすアンの視点と空想力が鮮やかに描き出されています。
「楽しもうと決心すれば、たいていいつでも楽しくできるものよ。」 そう話すアンの生き方は、苦しい時代を生きる私たちに小さなヒントを与えてくれているようです。
出典:映画『赤毛のアン グリーンゲーブルズへの道』公式サイト - 作品解説
何といってもこの作品の素晴らしいところは、本当に何気ない物語を本当によく描いているところだと思います。
ストーリーは、赤毛のアンことアン・シャーリーという妄想癖がある孤児の少女が、手違いでマシュー・カスバートの家に迎えられることから始まります。
マシューは、妹のマリラと暮らす独身男。農業を営む実直な人物で、心優しいおとなしい初老の男性です。家の実権はうるさ型の妹マリラが握っています。
この映画では、前半は駅にやってきたアンがマシューを待ち、迎えられ、馬車に乗って帰るという作りとなっています。
アニメ版では1話はこのストーリーだけで終わっています。
それをみせてしまう、高畑さんの演出が素晴らしいと思います。
余談ですが、この赤毛のアンは名作劇場で放送されました。そして、巨匠・宮崎駿監督も参加していました。しかし、途中で方向性・目指すものが明確に違ってきて、置手紙をして作品から去ったというエピソードがあります。
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話を戻すと、家についたアンですが、男の子をほしがっていた妹のマリラは、猛然と家に置くことを反対します。女性が苦手なマシューは妄想癖が多く、おしゃべりのアンを気に入るのですが、おとなしい性格なのでマリアに押し切られます。
結局、アンは次の日に孤児院に戻されることに。
そして、マリラと共に馬車に乗って、駅に向かいます。
そこでアンは、マリアに自分の生い立ちを話すのです。
2度、アンは家事手伝いとして孤児院を離れ、他の家族と暮らすのですが、その2度ともあまり良い家ではなかったのです。
アンはどちらかといえば虐げられ、居場所を見つけられなかったのです。そんなアンが唯一、心休まる場所が精神世界・・・好きな小説を読み、自分を主人公として投影することだったのです。
こんな話をしながら、駅に向かう最中、アンを引き取ってくれる女性が現れます。しかし、この女性は性質はあまりよくなく、今までアンが行った先の家のように扱われることは明白でした。
すると、マリラは心変わりして、アンを引き取ることを決意します。
と、アニメの序盤部分を映画として編集したものになっています。
しかし、雰囲気が良く、とても良い作品だったと思います。
おしゃべりなアンの会話劇が続きながら、グリーン・ゲイブルズの美しい背景が印象的に映し出されます。そして、何よりやせていて、かわいい顔ではない主人公のアンだったり、猫背のマシューだったりと、登場人物を必要以上に美化してないところも良かったと思います。
高畑勲監督はこの作品を「身につまされるのに、笑い出さずにはいられない、すてきなあとあじ」と語っています。
さりげない日常芝居の演出こそ、高畑勲監督の真骨頂と言えるかもしれません。
出典:http://www.gettyimages.co.jp
(宮崎監督いわく「高畑さんはナマケモノの子孫・あんなに非生産性的な人物はいない」。しかし、宮崎さんにとっては、ライバルであり、親友であり、師匠でもある存在なのです。写真・右はジブリのプロデューサーの西村さん。かぐや姫の物語は7年の製作期間がかかるというとんでもない事態になりました)
赤毛のアンは参加していた製作陣がとても豪華で、監督の高畑勲、作画監督の近藤喜文(耳をすませばの監督)、場面設定は宮崎駿、美術監督の井岡雅弘などが参加しています。
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