世紀の大失速 陰謀論も浮上!? ハミルトン モナコGP顛末記 当事者や本人の声も掲載!
世界三大レースの一つ、伝統あるモナコGP2015が開催されました。優勝は大逆転でニコ・ロズベルグになり、モナコで3勝目を挙げました。
しかし、レースは25秒以上の差をつけて、ハミルトンが圧倒的な優位性を保ったまま、終盤に入っていました。そして、モナコという市街地で行われるレースは、抜くことが最も難しいコースの一つです。ですから、ハミルトンの優勝は固い、そう思って見ていた人がほとんどでした。にも関わらず……いったい、何が起こったというのでしょうか!?
出典:http://livedoor.blogimg.jp/markzu
65周目
「眠気を誘うレースだった」…ハミルトンが盤石の態勢でトップを独走していたモナコGPを見ていたファンの感想です。しかし、ドラマは終盤に待っていました。
2位のロズベルグと25秒以上の差をつけていたハミルトン。マックス・フェルスタッペンとロマン・グロージャンのアクシデントにより、セーフティーカーが出走。後続との差がリセットされる事態になります。
ハミルトンは、それをふまえて、2位との差も考え、タイヤ交換をするためピットイン。タイヤを交換して、再スタートでも盤石の状況を作ろうとしました。しかし、ピットインして、再出発をするときに、ナッセがピットレーンを通過したため、それを待った1秒のロスが生み出されます。
また、セーフティーカーに追いついてしまい、ピットインする前の65週目だけで12秒のロスをしていたのです。これが、最大の誤算でした。つまり、タイヤ交換をする余裕があったギャップが、65週目だけで消失していたのです。その判断を、メルセデスは誤ったのです。ただし、この判断に費やせる時間は、ほとんどありませんでした。
このピットインの判断ミスで、トップだったハミルトンは、レースに復帰すると3位に転落していました。同僚のニコ・ロズベルグとセバスチャン・ベッテルに抜かれてしまっていたのです。タイヤを交換したハミルトンは猛追を見せるも、前を走るのはトップドライバーのベッテル。そして、モナコの狭いコースでは、いくらメルセデスの性能が良いF1カーでも、攻略することができませんでした。
その結果、棚ぼたで優勝したのがハミルトンとドライバーズタイトルを争うニコ・ロズベルグでした。ポイント差は10に縮まり、ハミルトンにとってはあまりに痛いレースになったのです。そして、このレースはF1史に残る、史上最大のミスの一つになってしまいました。
関係者の表情やコメント要約
ニコ・ロズベルグ(メルセデスAMG)
ハミルトンの同僚であるロズベルグは、チームのミスにより、モナコGP3連覇をはたし、モナコマイスターの仲間入りをはたしました。しかし、あまりにも後味の悪い結末だけに、複雑な気持ちをまじえながらも、優勝という結果に喜びもあるようです。
「セーフティーカーの後ろに僕しかいないことにびっくりした。ハミルトンがいないから、どこに行ったんだ!? と思った。それまでは、ルイス(ハミルトン)は、週末を通して強さを発揮して、完璧な仕事をしていた。優勝の資格はハミルトンにあった。
彼の今の気持ちは理解できる。気の毒だし、勝利にふさわしいのは彼だ。だけど、スポーツでは色々な運が作用することがある。だから、この優勝も優勝だ。これまでで一番ラッキーな出来事だったけれど、これを受け入れて楽しみたいとも思っている」
ニキ・ラウダ(メルセデス非常勤会長)
「誤った判断だった。どうしてあんなことになってしまったのか……わけがわからない。(チームの判断は)受け入れられない。ルイス担当エンジニアに詫びたよ。トトには今回の状況について、徹底的に分析するように伝えた」
トト・ヴォルフ(メルセデスチーム代表)
「ルイスはタイヤの温度が下がって、グリップがなくなったと伝えてきた。そこで、我々が大失敗をしでかしてしまったことを、申し訳なく思っている。チームを代表して謝罪する。間違いだった。我々はタイム差の計算を間違えていたんだ」
セバスチャン・ベッテル(フェラーリ)
「(会見では)僕はハッピーだったよ」 と場を和まそうとするも、ハミルトンの沈んだ表情が変わることはなかった。
ただ、表彰台では大喜びするロズベルグとは対照的に、ベッテルはハミルトンの気持ちを察し、気を使ってたシーンが印象的だった。これに対して、ベッテルと「意外に普通の感覚の持ち主なんだ」という感想がネットでは挙がっていました。
ルイス・ハミルトン(メルセデスAMG)
表彰台では暗い表情のまま、悲しみや憤り、様々な感情を抑え込んでいました。また、F1カーを止める時には、3位のプレートにぶつかって、怒りを表すシーンもありました。
過去には、エゴ的な一面も見せ、他の車にアクシデントを与えることもあったハミルトン。しかし、今回ばかりは、世界中から同情を集めています。
そして、この敗北により、これからのレースがおもしろくなったのは間違いありません。ロズベルグとの差は10ポイントしかなくなりました。そして、どちらかと言えばヒール的にみられることもあったハミルトンですが、今回の件で、彼を応援したいと思うファンも増えるように思います。そういう意味では、今回の最大な不運は、この先、ハミルトンにとって振り返ると、必ずしもマイナスにならないかもしれません。
ただ、逆に今季、このレースがなければ優勝できた……などということになれば、それもまた後々まで語り草になるシーズンとなりそうです。
「今の気持ちは言い表せない。自分と同じように、他の車もタイヤ交換すると思い、何も考えずにピットインした。モナコは何年もの間、僕の心に触れているレースだ。特別な存在だから勝ちたかったよ。
チームは今季、本当に素晴らしいから、彼らを責めたりしない。起きたことを分析して、どこが悪かったかはっきりさせる。そして、これからもっと前進するように努力する。常々、ファンやチームに言っているように、勝つときも負ける時も一緒さ。次なる戦いに向かおう」
最後に……この一連の事件を見ると、ハミルトンの表彰台での落ち込みようが、印象的でした。これほど、テレビで落ち込む人を見たことがないというぐらい沈んでいました。そして、それも当然の反応です。
また、順位が入れ替わった直後の解説の川井さんなどが、あっけにとられたというか、狐につままれたように、しばらく状況が理解できていないことが、この事件を物語っていました。
車から降りたハミルトンは、ベッテル、ロズベルグと目を合わせることもありませんでした。レース全体であったり、これからのF1にとってはおもしろい展開になるわけですが、ハミルトン個人で言うと、いたたまれない部分もあります。それでも、前向きな発言をしたハミルトン。今後、F1の神様がどのような結末を用意するのか、注目していきたいと思います。