ノバク・ジョコビッチ ストーリー 6歳で夢見たウィンブルドン優勝~素晴らしきコーチとの出会い
ノバク・ジョコビッチがテニスプレイヤーになると決めたのは、6歳の時だった。厳密に言えば、彼は6歳の時に、ウィンブルドンで優勝することを誓ったのだ。 きっかけは、レットブルピザーラ…両親がセルビアの山岳地帯、コパオニクという小さな町で営んでいたピザ屋だが、そのリビングにあるテレビである試合を見たためだった。
そこには、ピート・サンプラスがウィンブルドンで優勝する姿があったのだが、その瞬間、ジョコビッチは「いつの日か、あそこで優勝するのは僕なんだ!」と心に誓ったのだった。
知り合いにも、家族にもテニスをやっている人はいなかったし、母国であるセルビアではテニスは全く人気がなかった……にも関わらずだ。
ジョコビッチに言わせれば、テニスの人気のなさは、フェンシングのようなもの……ということらしい。実際、家族も知り合いも、テニスの試合を見たことさえなかった。
しかし、ジョコビッチは、4歳の時に小型のラケットとボールを両親にプレゼントされると、ひたすら壁に向かって打ち続けて遊んでいた…テニスはジョコビッチになぜかあっていたのだ。
そんなジョコビッチに、不思議な幸運が舞い降りるのは、まさに、ウィンブルドンで優勝することを誓ったその年だった。たまたま、道を挟んだピザ屋の向かいに、政府がテニスアカデミーを設立したのだ。アカデミーが設立されると幼いジョコビッチは、フェンスにかぶりついて生徒たちが練習する様子を見つめ続けていた。そして、数日間が過ぎると、エレナ・ゲンチッチという女性講師がジョコビッチに声をかけたのだ。
「これ、何かわかる? やってみたい?」
この瞬間から、ジョコビッチのテニス人生はスタートしたのである。
ジョコビッチはすぐにアカデミーの練習に参加することになった。ジョコビッチに声をかけたエレナ・ゲンチッチは、元プロテニス選手であり、コーチとしてモニカ・セレッシュの指導経験があった。ジョコビッチにとって、幸運だったのは、エレナ・ゲンチッチが素晴らしい、一流のコーチだったことだ。
テニスの技術指導はもちろんのこと、学ぶことの大切さを教えたのも彼女だった。ジョコビッチはアカデミーで、セルビア語だけではなく、英語、ドイツ語、イタリア語も学んだ。
また、実学だけにはとどまらず、クラシック音楽を聞いたり、詩を読むこともあった。こういった知的な学びは、後のジョコビッチにとって、とても大きい意味を持つようになる。つまり、ジョコビッチはテニス技術だけではなく、内面や精神性について学ぶ重要性を知ったからだ。
そして、ウィンブルドンの優勝を目指すジョコビッチは、とても優秀な生徒だった。毎日、サーブ、バックハンド、フォアハンドを何百本も打って、テニスの基本的な動きを体にしみこませた。歩くのと同じように、テニスの基本的な動きができるまで繰り返した。
また、両親は無理やりジョコビッチに練習をさせなかったし、コーチも決して叱ることはなかった。なぜなら、ジョコビッチはずっとテニスをしていたかったからだ。ジョコビッチはとにかくテニスが好きだったのだ。
こんなジョコビッチのことを、エレナは「ゴールデンチャイルド」と呼び、モニカ・セレッシュと同じくらい才能があると考え始めた。
ジョコビッチは大好きなテニスのとりことなり、「ノールがチャンピオンだ!」と鏡の前で、トロフィーに見立てたプラスチック、カップなどを立てては、悦に浸ることもしばしばだったのである。
ジョコビッチにとって、こうして幸せな時間は過ぎて行った。 しかし、11歳の時、人生が激変する。セルビアは戦火に巻き込まれることになったのだ…。
サイドストーリー『エレナ・ゲンチッチ』
エレナ・ゲンチッチは、ノバク・ジョコビッチが6歳の時から5年間指導を受けた初めてのコーチでした。ニューヨークタイムズに世界一のコーチと評されたこともあるゲンチッチは、フェンス越しに熱心に練習を見つめる少年に、興味と好奇心を持ったのです。
それが、きっかけで、ゲンチッチは少年にテニスのレッスンのてほどきを始めます。ゲンチッチは早くから、ジョコビッチの才能と意欲を見抜いており、熱心にレッスンを施しました。
また、時に自らが好む詩人・プーシキエンの詩を読んで聞かせるなど、テニスの指導にとどまらない関係を築いていきました。
そんなエレナ・ゲンチッチが亡くなったのが、2013年でした。
ジョコビッチはその訃報を聞くと、すぐにセルビアに帰国しました。
ちなみに、ゲンチッチに関して、ジョコビッチの父親はこう語っています。
「エレナは我々のファミリーなんです。今のノバクがあるのは、彼女のおかげです。ノバクは決して彼女のことを忘れることはありません。テニスだけではなく、人生に対するノバクの考え方を作り上げたのも彼女なのですから……」
次回のノバク・ジョコビッチ ストーリーは『戦火の夢…最も大切なものとは…』になります。
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一部参照
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