カムイ伝を読み直す…
今週のお題特別編「この春に始めたいこと・始めたこと」
〈春のブログキャンペーン 第2週〉
僕が始めたのは、久々に漫画を読み始めました。といっても、読みまくるというより、以前好きだったカムイ伝という漫画を、再度読み直したという感じです。もう一度読みましたが、衝撃を受けました。時を重ねるとやはり見方もかわりますし、気付くことも増えます。感動するポイントだったり、心が動かされる部分も変わったりします。
今回、読んで山に住む巨人、山丈にはなぜか目が行きましたね。彼が叫ぶ「カムイ~!」は、何もカムイにだけ叫ぶのではなく、アイヌ語で「神」の意味を持つこの言葉は、そういった神聖な行為や人物に対して向けられるものです。ですので、カムイのテーマである差別を超えて結婚を宣言する正助にも向けられますし、赤ん坊の時のカムイが山丈を恐れず、優しさを示しておにぎりを渡す時にも叫ばれます。作者の白土三平の凄みは随所に見られますが、この山丈というぼろぼろの服をまとった異形の巨人の存在感もその一つだと思いました。
二つ目は作者のその深い知識に驚かされますね。マタギについても詳しいですし、農民やその下の差別されている身分の職業に関してもとても詳しいです。民俗学の分野であったり、歴史的な解釈や背景も博学で、読んでいて楽しめます。個人的にはやはり、カムイたち差別を受ける職業が気になって、色々ネットで調べてみました。
三つ目は、その豊富な登場人物です。ですので、これはカムイ伝ですが、群集劇のようなところもあり、とにかく生活に根差した物語が迫力をもって迫ってきます。勇ましいクシロですが、完全な個人主義で、彼自体は野性味があり優れています。しかし、個人ではどうにもならないことがたくさんあって、乗り越えることはできないのです。それでも、彼は愛した女性が当時、ご法度だった隠れキリシタンであり、処刑されるところに現れて片足を失いながらも彼女を助けます。彼女はクシロのその姿に心が動き、拒んでいた踏み絵を実行して、処刑をまぬがれるのです。そして、クシロは自分の住む海辺の洞窟で彼女と暮らすのですが、病気になってしまいます。世間とのかかわりを拒絶するクシロは何もできないまま、彼女を死なせてしまうのです。ここでは、個人主義の限界であったり、宗教を超える愛が迫力をもって描かれます。その是非はともかく、登場人物のド迫力の行動や存在感に圧倒されるのです。
個人的には苔丸は特に気に入りましたね。義に厚く、実行力がある存在です。後は赤目という忍者や、夢屋という資本主義の象徴である商人、勧進頭のツブテなど、とにかく登場人物一人一人に存在感があります。そういった点も、白土三平の本当に優れた点だと感じました。
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