風立ちぬの感想 最期のシーンのセリフは違っていた!?(ネタバレ含む) そして、庵野さんが抜擢された理由も
今週のお題「ふつうに良かった映画」
風立ちぬは太平洋戦争の初期に強力な戦闘機だったゼロ戦を設計した堀越二郎と、戦争前後に文学者として風立ちぬなどの作品を残した堀辰雄を主人公にしています。
宮崎駿監督はこの二人の人物をミックスさせて、一人の主人公を誕生させたのです。
ヒロインの里見菜穂子は実在する人物がモデルとなっていて、堀辰雄の恋人でした。
結核になり若くして病死しています。(堀辰雄も後に結核で病死)
出典:http://ono-blog.cocolog-nifty.com
風立ちぬの主人公は純粋に設計者として能力の高い飛行機を設計しますが、その飛行機は戦闘機です。しかし、時代がそれを要請し、それは職業として高い地位として認められることでもありました。この当時の軍人は佐官(少佐以上)になると、一般の兵士の100倍くらい給料の差があったと記憶しています。
宮崎監督の実家は戦時中、工場で兵器の部品を造っていて、戦時中でも不自由がなかったと言います。それを、宮崎監督は若いころ、ずっと気にとめていたようです。
また、空襲の時に車で逃げていた時に、子供を抱えて助けを求めた母親を乗せてあげなかったことに疑問を持ちました(運転していたのは叔父。この助けを求めた人は助かった)
ですが、だいぶたってから、宮崎監督の父親が、困った人を家にいれてあげたりと親切にしていたこともわかって喜んでいます。
ここらへんが、シベリアを分け与える風立ちぬの主人公に、反映されていると思います。
なぜ、宮崎駿監督が風立ちを最後の長編アニメに選んだのか? やはり、書きたかったんだと思います。
宮崎監督は、東映時代からの先輩・高畑監督らと組み、子供向けの映画を書くことにこだわってきました。
パンダコパンダ、アルプスの少女ハイジ、ジブリ作品のトトロ、魔女の宅急便、千と千尋の神隠し・・・子供を意識したものが多いです。
しかし、今回は本当の意味で、子供向けではない作品を手がけました。
(確かにもののけ姫、ナウシカなども子供向けではないかもしれませんが…)
また、宮崎監督はとにかく飛行機が好きです。
昔から愛読書としてサン=テグジュペリの「人間の土地」を何度も読み、ついには、彼の飛行ルートを旅するという経験もしています。
宮崎監督はまるで少年のような目で、飛行機から大地を見下ろしている姿が映像に残っています。
ちなみに、サン=テグジュペリは星の王子様の作家でもあります。
彼は空への憧れから、夜間飛行も行う小型飛行機のパイロットになります。この当時の飛行機は、墜落率がきわめて高い、危険な乗り物でした。そして、最後は第二次世界大戦の時に志願して祖国・フランスのために飛行機に乗り行方不明になりました。
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宮崎監督は自身の中に、戦争を否定する気持ちと、しかし、戦闘機が好きという矛盾を抱えていました。
その矛盾を表現しているのも、風立ちぬではないかと思います。
そして、太平洋戦争の時代とそこに至る時代を主人公を通して描いています。
我々は今でこそ、平和な日本にいるわけですが、以前と何が変わり、何が変わっていないのか、しっかり見る必要があるのではないでしょうか?
風立ちぬの最後は、実は菜穂子が「きて」という最後で終わる可能性がありました。
つまり、あの世ですね。
しかし、このアイデアに主人公の声優の庵野さんも猛烈に反対したようです。
そして、「生きて」と「生」が加わったのです。
だから、この作品の最後の主人公の「ありがとう」というセリフに心動かされるものがあったのではないかと思います。
〝絵コンテ版
菜穂子「あなた、来て」
カプローニ「君のために祈っていたんだ」
菜穂子「きて……」
映画版
菜穂子「あなた、生きて」
菜穂子「生きて……」 ”
出典:宮崎駿最後の長編アニメ「風立ちぬ」感想と考察。インタビュー抜粋ネタバレ有 | soramitama
ちなみに、庵野さんという声優に関しては素人が、なぜ、選ばれたのか。
おもしろいエピソードがあります。
決まらない主人公の声優。
煮詰まって頭を抱える宮崎駿監督。
「素人が良いんですかね・・・」
とスタッフが声をもらします。
その時、鈴木敏夫プロデューサーが庵野さんの名前をふと出します。
最初は冗談半分かと、驚き苦笑する宮崎監督。
しかし、実際に声を聴くと・・・これは、もしかして!となります。
そんな、声優が決まる一部始終はジブリのドキュメンタリーで見ることができます。
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